「今日、監督来ないらしいよ。」
誰かが嬉しそうに言い出した瞬間、
部員たちの空気がふわっと軽くなる。
「マジで!?✨」
「最高じゃん」
「バッティング長めにできるかもな〜」
――10分後。
「……え、来てんじゃん。」
颯爽とグラウンドに現れる監督。
その瞬間、空気が一気に凍りつく。
「誰だよ、来ないって言ったやつ」
「俺じゃない、〇〇から聞いた」
「いや俺も△△に聞いただけだし…」
この流れ、何度繰り返したことか。
実際のところ、「監督来ないらしいよ」の信ぴょう性は限りなくゼロ。
でも、1%だけ――本当に来ない日が存在したのも、また事実。
今回はその**“奇跡の1%の日”**を、今になって振り返ってみる。
1. 「自主練でよくね?」
「監督来ないらしいよ」と「自主練でよくね?」は、ほぼセット。
誰かしらが必ず言い出す。そして控えめに言って――大賛成だ。
ピッチャーでもないのにピッチング練習し始めるやつ、
ストレッチという名のもとに、ただ座っておしゃべりしてるやつ、
「外周行ってくる」とだけ言い残して、どこかに散歩に行くやつ。
みんな、めちゃくちゃ楽しそう。
てか、その笑顔、試合の時よりイキイキしてるぞ?笑
2. 野球部じゃなくなる日
監督が「100%来ない」と確定した瞬間――
我々はもう野球部じゃなくなる。
鉄板パターンはサッカー部への転身。
野球のユニフォームのまま、なぜか始まる7対7のガチサッカー。
これがなぜか、めちゃくちゃ盛り上がる。
他にもチームによって色々ある。
- なぜか始まる一発芸大会
- グラウンドで立ち話が止まらない「おしゃべり会」
- 地面に寝そべってスマホタイム(※当時は禁止だった)
これら全てが、監督の不在によってのみ許される一日限りのフェスなのだ。
3. そして誰かが見てる
さて。勘のいい読者なら、そろそろ気づくだろう。
全部、誰かに見られている。
有力候補はこのあたり:
- サッカー部の監督(うちの部が使ってるグラウンドが丸見え)
- たまたま出勤してた教職員
- 近所に住んでて監督と仲がいい謎のおじさん
我々は完全に開放モードなので、もはや警戒心ゼロ。
ノーガード。全方向に油断している。
そして――
翌日、しっかり怒られる。
「監督来ないらしいよ」
この言葉の本当のオチは、翌日の説教までがワンセットだったりする。
結び
でも、正直あの1日。
野球部じゃなかったかもしれないけど、なんか楽しかったよな。
たまには、ああいう日があってもいいと思う。